本記事の対象者

クレアチンを試すか迷っている方。「体重が増える」と聞いて不安になっている方。ローディングをすべきか、何gを飲むべきかで迷っている方。
クレアチンは効果の裏づけが多いサプリメントですが、飲み始めると体重が増えることが知られています。この増加を「水太り」と受け取って続けるのをためらう方は少なくありません。
2026年に Journal of the International Society of Sports Nutrition に掲載されたメタアナリシス1は、筋トレ単独と筋トレ+クレアチンを比べた介入試験を63件集め、筋力と体組成を同じ枠組みで統合しました。
結論から言うと、上肢・下肢の筋力と除脂肪量が増え、体重もわずかに増える一方で、体脂肪率は低下し、脂肪量には差が示されませんでした。また、1日の摂取量・ローディングの有無・期間・週の頻度といった条件では、有意な群間差が検出されませんでした。

筆者の紹介

筋トレ好きのエンジニアです。技術評論社『Software Design』で「エンジニアのためのやる気UPエクササイズ」を2年間(全26回)連載し、Xのスペースで毎晩21時から20分の家トレを配信する「みんトレ」を6年ほど続けています。

どんな研究か

研究の条件をまとめると以下の通りです。

  • PubMed・Web of Science・Cochrane Library・Embase・EBSCO を2025年4月21日まで検索し、引用文献の追跡も実施
  • 統合されたのは介入試験63件・1,489名(男性970名、女性248名、性別の報告なし271名)
  • 年齢は18〜75歳。トレーニング歴は経験者28%・未経験者49%・アスリート23%
  • 介入期間は4〜12週、トレーニング頻度は週3〜5回。使用されたクレアチンはモノハイドレート(結果の節は「全試験」、考察の節は「大多数」と書いており、原文内で表現が一致していません)
  • 摂取プロトコルはローディングのみ7%・ローディング+維持54%・維持のみ39%
  • 効果の大きさはHedges' g。同じ試験から複数の結果が出ることを扱える3レベルランダム効果モデルで統合
  • PROSPERO に事前登録(CRD420251078957)

3レベルメタアナリシスという手法が使われています。ひとつの試験がベンチプレスとスクワットの両方を報告しているような場合、通常の統合ではどちらか一方しか使えないか、別々の独立した試験として扱ってしまいます。この手法は同じ試験から出た複数の結果が互いに似ていることを前提に組み込むので、情報を捨てずに済みます。

この記事の数字の読み方

  • RCT(ランダム化比較試験)は、参加者をくじ引きのように分けて条件を比べる試験です。メタアナリシスは、同じテーマの試験を集めて結果を統計的に統合する手法です。
  • Hedges' gは「効果の大きさ」を、単位の違う指標でも比べられるようにそろえた数値です(SMD の一種)。この論文は0.2未満を小さい、0.2〜0.5を小さめ、0.5〜0.8を中くらい、0.8以上を大きいと分類しています。
  • 95%信頼区間(95%CI)は推定の不確かさの幅です。この幅が0をまたいでいる場合は「差があるとは言えない」と読みます。
  • 予測区間は「次に同じような試験を1本行ったら、結果がどのあたりに着地しそうか」の範囲です。信頼区間が0をまたいでいなくても、予測区間が0をまたぐことはあります。
  • 除脂肪量は脂肪を除いた体重(LBM)です。筋肉だけでなく、水分や骨なども含みます。
  • GRADEは、集まった研究全体の確からしさを「高・中・低・非常に低」の4段階で評価する枠組みです。

結果:6つの指標のうち、差が示されなかったのは脂肪量だけ

筋トレ単独と比べた統合結果は以下の通りです。

指標 試験数 Hedges' g(95%CI) p値 判定
下肢筋力 34試験・1,094名 0.55(0.38〜0.71) <0.001 併用が高い
上肢筋力 31試験・1,273名 0.54(0.37〜0.71) <0.001 併用が高い
除脂肪量 44試験・1,175名 0.30(0.18〜0.41) <0.001 併用が高い
体重 50試験・1,180名 0.12(0.06〜0.23) 0.04 併用が高い
体脂肪率 41試験・1,067名 −0.14(−0.26〜−0.02) 0.02 併用が低い
脂肪量 35試験・904名 −0.10(−0.23〜0.03) 0.14 差は示されず
筋トレ+クレアチンと筋トレのみを比べた6つの指標の統合効果量と95%信頼区間のフォレストプロット。脂肪量だけが0をまたぐ
図1: 6つの指標の統合効果量と95%信頼区間です。0の縦線をまたいでいるのは脂肪量だけで、残る5つは差が示されています。筋力の2行に付いている細い線は予測区間で、こちらは0をまたいでいます。出典: Wang H, et al. J Int Soc Sports Nutr. 2026。報告されている数値から作成したもので、原図の転載ではありません

筋力は上肢・下肢とも0.5台で、この論文の分類では「中くらい」にあたります。除脂肪量は0.30で「小さめ」、体重は0.12と非常に小さい値でした。

下肢筋力について補足があります。外れ値を含めた最初の推定は g=0.66(95%CI 0.47〜0.85)でしたが、影響分析で1件(Schweizer 2021、g=3.77)が突出していたため、これを除いたg=0.55が以降の解析と要旨で使われています。本記事もこの0.55を採っています。

筋力の2つは予測区間が0をまたいでいます(上肢 −0.13〜1.20、下肢 −0.04〜1.14)。平均としては併用が上回る方向でも、次に1本試験を行ったときに差が出ない結果もありうるということです。著者自身も「効果の大きさと方向は今後の研究環境によって変わりうる」と書いています。

エビデンスの確実性は GRADE で、全アウトカムを通じて「低」から「中」の範囲でした。バイアスのリスク(研究デザイン上の偏りやすさ)は63件中、低41件・中16件・高6件です。

もうひとつ押さえておきたいのが筋力の出版バイアスです。上肢・下肢とも Egger の検定で有意な非対称性が検出されました(上肢 t(55)=5.32、下肢 t(46)=3.99、いずれも p<0.001)。欠測を補う trim-and-fill をかけると、上肢は 0.54→0.36(95%CI 0.21〜0.51)、下肢は 0.55→0.35 に縮みます(有意性は保たれます)。著者はこれを、真の効果が報告値よりやや小さい可能性を示すものとして扱っています。

増えた体重の中身:除脂肪量が増え、体脂肪率は下がった

「体重が増える」という観察は、この研究でも確認されています(g=0.12)。重要なのは同時に何が起きているかです。

  • 除脂肪量は増えた(g=0.30)
  • 体脂肪率は下がった(g=−0.14)
  • 脂肪量には差が示されなかった(g=−0.10、95%CI が0をまたぐ)

著者はこの組み合わせから、体重の増加は主に除脂肪量の増加によるもので、その結果として体脂肪率がわずかに低下したと述べています。

ただし「増えた除脂肪量の中身」については、この研究は答えを出していません。著者は、クレアチンが筋細胞内に水を引き込む性質を持つため、最初の1週間に生じる体重増加(通常0.5〜1.5kg)の一部は水分保持によることを認めたうえで、次のように書いています。

細胞内水分と細胞外水分のアウトカムは、含まれた試験のあいだで十分に一貫した形で報告されておらず、別々に定量的に統合することはできなかった。

つまり「水か筋肉か」を数値で分けることは、今回のデータではできていません。除脂肪量という指標は、そもそも細胞内の水分も含む値です。

著者はそのうえで、細胞内の水分増加は細胞外のむくみとは異なり、細胞の膨張そのものが同化のシグナルとして働くという仮説を紹介しています。これは仮説であって、この研究が検証したものではありません。

なお体重についても、下肢筋力と同じ外れ値(Schweizer 2021、体重では g=−1.24)が影響分析で検出されており、これを除くと g=0.14(95%CI 0.03〜0.26、p=0.01)とわずかに大きくなります。本記事の表は除外前の値を採っています(要旨もこちらです)。

また脂肪量について、出版バイアスの検討で行われた補完解析(trim-and-fill)では、9件の欠測を仮定して補うと g=−0.16(95%CI −0.27〜−0.04、p=0.007)と有意になりました。著者は補完された試験は仮想的なもので、対称性の仮定に依存するとして慎重な解釈を求めています。本記事の表では補完前の値を採っています。

飲み方の違いでは差がつかなかった

この研究は、効果を左右しそうな条件を系統的に検討しています。介入プロトコルに関する変数は、どれも有意な群間差を示しませんでした。

  • 1日の摂取量(5g超 vs 5g以下)
  • 摂取プロトコル(ローディングのみ vs ローディング+維持 vs 維持のみ)
  • 用量の決め方(固定量 vs 体重あたり)
  • 介入期間(8週以上 vs 8週未満)
  • 週のトレーニング頻度(週3回超 vs 週3回以下)

参加者側の特性である性別とトレーニング歴(アスリート vs 経験者 vs 未経験者)でも、有意な群間差は検出されませんでした。有意だったのは後述する年齢だけです。

探索的なメタ回帰でも、クレアチンの用量は筋力にも体組成にも有意に関連しませんでした。

ここで注意が要ります。これは「どの飲み方でも同じ効果が得られる」ことが示されたという意味ではありません。群間差が検出されなかったというだけで、同等であることが確認されたわけではありません。試験数が限られる区分では、差があっても検出できない可能性が残ります。

さらに、著者は考察で摂取プロトコルについて踏み込んだ記述をしています。統計的な群間差はなかったものの、区分ごとの傾向として次のように述べています。

維持期を設けた研究(最初のローディングの有無を問わない)は有意な筋力の改善を報告する傾向があった一方、短いローディング期間のみの研究では明確な利益が示されなかった。トレーニング期間を通じて継続的にクレアチンを摂ることが、筋肉内のクレアチン濃度を高く保ち筋力の向上を実現するために必要だと考えるのが理にかなっている。

つまり「ローディングをするかどうか」より「継続して摂り続けるかどうか」のほうを、著者は重く見ています。

ただしこの見立ては区分ごとの傾向からの解釈で、有意な群間差に裏づけられたものではありません。実際、表を見ると「ローディングのみ」の区分が有意でないのは上肢筋力だけ(6つの効果量、g=0.25、95%CI −0.33〜0.82、p=0.39)で、下肢筋力では有意です(4つの効果量、g=0.64、95%CI 0.08〜1.26、p=0.03)。著者の記述は上肢の結果に引きずられている面があり、「ローディングのみでは効かない」と読むのは行き過ぎです。

年齢だけが筋力の効果と関連した

唯一、統計的に有意な群間差が出たのが年齢でした。上肢筋力(F(2,54)=3.38、p=0.04)と下肢筋力(F(2,45)=4.97、p=0.01)の両方で有意です。区分ごとの推定値は以下の通りで、いずれも上肢筋力の値です。

区分 効果の大きさ 人数
若年成人(18〜44歳) g=0.62(p<0.001) 874名
高齢成人(60歳以上) g=0.52(p=0.004) 291名
中年成人(45〜59歳) g=−0.10(p=0.71) 108名

探索的なメタ回帰でも、年齢は上肢筋力(β=−0.008、p=0.03)と下肢筋力(β=−0.0079、p=0.03)の効果の大きさと逆方向に関連し、若い参加者を対象とした研究ほど効果が大きい傾向が示されました。

ただし著者はこの所見を繰り返し「探索的・仮説生成的」と位置づけています。理由は3つ挙げられています。年齢区分ごとの試験数が偏っていること(中年成人は4つの効果量・108名のみ)、多数の調整変数を検定していて多重比較の補正をしていないこと、そして解析が研究単位の平均年齢に基づくもので個人データではないことです。最後の点について著者は、個人レベルで年齢が反応性を左右するかどうかはこの解析では判定できず、生態学的バイアスの影響を受けうると明記しています。

中年成人の区分だけ効果がマイナスに振れている点も、108名という規模を踏まえると推定の精度が低いと著者は述べています。

この研究の限界

著者が挙げている限界のうち、読み方に直接かかわるものを挙げます。

1. 対象の偏り
含まれた試験の参加者は若年から中年の男性が中心で、女性のデータは相対的に少なくなっています(女性248名に対し男性970名)。著者は限界の節で、サブグループ解析が女性のクレアチン摂取による筋力の伸びは小さく有意でなかったことを示唆したと述べ、女性を対象とした研究が必要だとしています。

ただしこの記述は上肢筋力にしか当てはまりません。女性の推定値は上肢では有意でない一方(4つの効果量、g=0.45、95%CI −0.18〜1.09、p=0.16)、下肢では有意で、しかも男性(0.52)より大きい値です(6つの効果量、g=0.76、95%CI 0.28〜1.25、p=0.003)。性別による群間差そのものは上肢・下肢とも有意ではないので、いずれの区分の値も記述的に読むべきものです。

2. 栄養の記録と管理が不十分
習慣的なタンパク質摂取量、総摂取カロリー、水分の状態、サプリのタイミング、エネルギー収支が、多くの試験で報告されていないか、報告の仕方がそろっていませんでした。著者は、この結果を「標準化された食事の下でのクレアチン単独の効果」ではなく、「各試験の栄養条件の下で筋トレにクレアチンを足した効果」として読むべきだとしています。

3. トレーニング内容のばらつき
全試験が筋トレを含んでいますが、種目選択・強度・量・漸進のさせ方・監督の有無・頻度が試験ごとに違います。実験外で別の競技練習や有酸素運動をしていた参加者もいた可能性がありますが、そこは一貫して記録されていません。

4. 試験1件あたりの規模が小さい
各試験の参加者数は8〜45名です。著者は、性差・年齢のパターン・最適な用量といったサブグループの効果については不確かさが残ると述べています。

実践的にどう読むか

以上を踏まえて、この研究から言えるのは次の範囲です。

  • 筋トレにクレアチンを足すと、上肢・下肢の筋力と除脂肪量が上回る結果が示されました。筋力の効果は「中くらい」に分類される大きさです
  • 体重は増えますが、同時に体脂肪率は下がり、脂肪量には差が示されませんでした。著者は体重増加の主因を除脂肪量の増加としています
  • ただし「増えた分が水か筋肉か」は、この研究では分けられていません。細胞内外の水分が一貫して報告されておらず、別々に統合できなかったためです
  • 飲み方(用量・ローディングの有無・期間・頻度)では群間差が検出されませんでした。同等性が示されたわけではありません
  • ただし著者は、統計的な差とは別に「トレーニング期間を通じて継続的に摂ること」を重く見ています。区分ごとの傾向からの解釈で、有意な群間差に基づくものではありません
  • 年齢と筋力の効果の関連は探索的な所見です。区分の偏りと多重比較のため、著者自身が仮説生成的と位置づけています

製品を選ぶうえでは、含まれた試験が使っていたクレアチンがモノハイドレートである点を押さえておくとよいと思われます。著者は考察で、大多数の研究がモノハイドレートを用いていたため本結果は主にこの形態の効果を反映しており、クレアチンの種類をモデレータとして正式に評価するには変動が足りなかったと明記しています。つまり他の形態との比較は、この研究では検討されていません。

なお、タンパク質の摂取量そのものについてはプロテインの効果的な飲み方・摂取量・タイミングを徹底解説。で、トレーニング量の考え方については筋力はどこまで伸びる?セット数・強度・頻度の用量反応を157研究から解析したメタアナリシスで扱っています。

出典



注釈・出典

  1. Resistance training combined with creatine supplementation: a three-level meta-analysis of multidimensional outcomes from strength enhancement to body composition remodeling