本記事の対象者

ホエイ・カゼイン・ソイ・エンドウなど、どのプロテインを買うか迷っている方。1日にどれくらい飲めばいいのか知りたい方。
「プロテインは種類で差が出るのか」「たくさん飲めばその分だけ増え方も大きくなるのか」は、長いあいだ決着のついていない話でした。
2026年に発表されたベイジアン・ネットワークメタアナリシス1は、この2つを1つの枠組みで扱っています。結論から言うと、除脂肪量(脂肪を除いた体重。LBM)の増え方は順位指標でホエイが最上位となり、ホエイの用量反応曲線は1日30〜35gあたりで頭打ちになると報告されました。ただし著者はこの用量の推定を「探索的」と位置づけています。
この数字には、後述するとおり無視できない前提と限界がついています。本記事では、その中身を順に見ていきます。

筆者の紹介

筋トレ好きのエンジニアです。技術評論社『Software Design』で「エンジニアのためのやる気UPエクササイズ」を2年間(全26回)連載し、Xのスペースで毎晩21時から20分の家トレを配信する「みんトレ」を6年ほど続けています。

どんな研究か

この研究は、プロテインのサプリメントとプラセボ(または別の種類のプロテイン)を比べたRCTを集めて統合したものです。
研究の条件をまとめると以下の通りです。

  • 対象は18歳以上の健常者(過体重・肥満を含む。筋肉の代謝に影響する慢性疾患の患者は除外)
  • 6週間以上・週2回以上の監督下のレジスタンストレーニングと併せてプロテインを摂取している試験のみ
  • 統合されたのはRCT 36件・1,552名・89アーム(アームは1つの試験の中の各群のことです)。試験期間は6〜24週(中央値12週)、サプリの摂取量は1日15〜75g
  • 比較されたのはホエイ・カゼイン・ソイ・エンドウ(ピー)・ライス・牛乳・ブレンド・プラセボの8ノード
  • 参加者の内訳は、72%の試験が男性のみを対象、65歳以上を対象にした試験は9件、年齢の範囲は19〜72歳
  • 主要アウトカムは除脂肪量と1RM(1回だけ挙げられる最大重量)ですが、1RMの解析は結果の項で著者自身が探索的な副次アウトカムと位置づけ直しています。プロトコルはPROSPERO(CRD420261340515)に事前登録

ネットワークメタアナリシス(NMA)というのは、「AとBを直接比べた試験」と「AとC、BとCを比べた試験」を組み合わせて、直接対決のないA対Bも間接的に推定する手法です。
プロテインの研究は「ホエイ対プラセボ」に偏っていて(この直接比較だけで14試験)、「ライス対エンドウ」のような直接比較はほとんど存在しません。NMAはその穴を埋めるために使われています。裏を返すと、直接比較が少ない組み合わせほど推定の不確かさが大きいということでもあります。

この記事の数字の読み方

この先の表と図を読むために、使われている用語をまとめておきます。

  • RCT(ランダム化比較試験)は、参加者をくじ引きのように分けて条件を比べる試験です。メタアナリシスは、同じテーマの試験を集めて結果を統計的に統合する手法です。
  • ネットワークメタアナリシスは、A対B、B対Cのように直接比べた試験をつなぎ合わせて、直接比べた試験のないA対Cまで推定する手法です。比較の網をネットワーク、その中の一つひとつの手法をノードと呼びます。
  • MD(平均差)は、2つの群の平均の差です。この研究では除脂肪量なのでkg、1RMでもkgが単位になります。
  • 95%信用区間(95%CrI)は、ベイズ統計での推定の不確かさの幅です。この幅が0をまたいでいる場合は「差があるとは言えない」と読みます。この研究はベイズ推定なので、区間はすべて信用区間です。
  • 予測区間は「次に同じような試験を1本行ったら、結果がどのあたりに着地しそうか」の範囲です。平均の不確かさを表す信用区間より広くなります。
  • SUCRAは「他より上位に来やすいか」を要約した順位の目安で、0(最下位)〜1(最上位)の値をとります。効果の大きさや、差があることの証明ではありません。

種類のランキング:除脂肪量が増えたと報告されたのは乳由来

プラセボと比べた除脂肪量の変化は、以下のように報告されています。

種類 SUCRA プラセボとの差(MD・kg・95%CrI)
ホエイ 0.91 +1.24(0.61〜1.87)
牛乳 0.78 +1.18(0.22〜2.14)
カゼイン 0.72 +0.92(0.18〜1.66)
ライス 0.65 +0.96(−0.12〜2.04)
ブレンド 0.48 +0.62(−0.34〜1.58)
ソイ 0.40 +0.55(−0.15〜1.25)
エンドウ 0.35 +0.48(−0.20〜1.16)
プロテイン7種類の除脂肪量の増加量とプラセボとの差を示したフォレストプロット。ホエイ・牛乳・カゼインだけが0を含まない
図1: 種類別の除脂肪量の増加(プラセボとの差)。0をまたいでいないのは乳由来の3種だけです。ただし薄い帯で示した予測区間は3種とも0をまたいでおり、「次の試験でも同じ差が出る」とまでは言えません。出典: Li Y, et al. Front Nutr. 2026。報告されている数値から作成したもので、原図の転載ではありません

信用区間が0をまたいでいない、つまりプラセボとの差があると読めるのはホエイ・牛乳・カゼインの3つだけでした。ライス以下は点推定(区間の中心にあたる推定値)こそプラスですが、区間が0を含んでいます。SUCRAは順位の目安であって、上位だから他より効果が大きいと証明されたわけではありません。

著者はホエイが上位に来た理由の仮説として、消化吸収の速さとロイシン量を挙げています。ホエイはタンパク質100gあたりロイシンを約13g含み、摂取後60〜90分で血中アミノ酸濃度が急上昇する「速い」タンパク質です。一方カゼインは胃の酸性環境で固まってゆっくり分解されるため、ピークは低いものの長く続きます。牛乳タンパクは自然な状態でカゼイン約80%・ホエイ約20%なので、両方の性質を併せ持つことが2位の理由かもしれない、と説明されています。

ソイやエンドウが下位だったことについては、ロイシン密度の低さ(ソイは7〜8%、ホエイは13%)、PDCAAS(アミノ酸組成と消化率を加味したタンパク質の質の指標)の差(ソイ約0.91、ホエイ1.00)、トリプシンインヒビターなどの抗栄養素が理由の候補として挙げられています。
ただし著者は「植物性が効かないという意味ではない」とはっきり書いています。エンドウとホエイで上腕二頭筋の厚さの増加が同等だった試験や、総タンパク質量を揃えた植物性中心の食事と雑食の食事で差が示されなかった試験があり、総摂取量を揃えて比べるほど動物性と植物性の差は縮まる傾向があると整理されています。

用量:ホエイは1日30〜35gで頭打ちになると推定された

この研究のもう一つの主題が用量反応です。
ホエイについては1日20〜75gの範囲に10個の用量アームのデータがあり、これに制限付き3次スプライン(データに滑らかな曲線を当てはめる手法)を当てはめた結果、15〜30g/日で急な右肩上がりとなり、30〜35g/日あたりで曲線が寝る(プラトーに達する)と報告されました。35g/日を超えると、追加分による除脂肪量の伸びは小さくなっていくとされています。
なお、この「15〜30g/日」という立ち上がりの範囲は、実際にデータがある下限(20g/日)より低い側まで曲線を延ばしたところを含んでいます。原文の方法の項でも、予測値は10〜80g/日の範囲で描いたと書かれています。曲線の左端はデータそのものではなく当てはめの結果である、という点は割り引いて読む必要があります。

これは若年者では1食あたり20〜25gの良質なタンパク質で筋タンパク質合成が頭打ちになる(高齢者では約40g)という、一度の食事に対する数時間の反応を測る研究(急性研究)の知見と整合する、というのが著者の解釈です。それ以上は合成ではなく酸化に回っていく(いわゆる「マッスルフル」)という説明になります。

ただし著者自身がこのプラトー推定を「探索的(exploratory)」と明記している点は押さえておく必要があります。根拠は10個の用量アームであって、用量を細かく振った大規模試験があるわけではありません。

なお、用量を連続量として扱ったベイズメタ回帰では以下が報告されています。βは説明変数が1単位増えたときに除脂肪量の変化がどれだけ動くかを表す係数です。

  • サプリの摂取量:β = 0.024kg(1g/日あたり、95%CrI 0.004〜0.044)。つまり1日あたり10g増やすと除脂肪量の変化が+0.24kgという関係になります
  • 介入期間:β = 0.035kg(1週あたり、95%CrI 0.002〜0.068)。期間が長い試験ほど変化が大きいという関係が示されています
  • 平均年齢:β = −0.008kg(1歳あたり、95%CrI −0.021〜0.005)。マイナス方向の傾向はありますが、区間が0をまたぐため差があるとは言えません

もう一つ重要な但し書きがあります。この用量反応モデルは「サプリで摂った分」だけを説明変数にしており、普段の食事から摂っているタンパク質量は考慮されていません(試験によって報告がまちまちで揃えられなかったため)。
著者は、普段の摂取量が少ない人ではサプリの最初の20g/日程度が食事の不足分の穴埋めに使われるため、「上乗せ」として効き始める用量はもっと高い側にずれる可能性があると述べています。

65歳以上ではホエイの優位が縮まった

年齢で層別した解析では、順位の目安(SUCRA)が以下のように報告されています。

種類 65歳未満(25試験)のSUCRA 65歳以上(9試験)のSUCRA
ホエイ 0.92 0.89
牛乳 0.75 0.80
カゼイン 0.68 0.76

高齢者でもホエイは1位のままですが、カゼインと牛乳が詰めてきて差が縮まっています(この2つの層を合計しても34試験で、36件すべてが層別解析に入っているわけではありません)。
著者はこれをアナボリック抵抗性(加齢によって筋肉がアミノ酸に反応しにくくなること)で説明しています。加齢によって筋タンパク質合成の急性反応が鈍ると、ホエイの「速さ」という強みが目減りし、逆にカゼインや牛乳のようにアミノ酸をゆっくり供給し続けるタイプの相対的な価値が上がる、という理屈です。著者は「朝はホエイ、夜はカゼイン」という時間帯での使い分けを仮説として挙げていますが、それを直接検証したRCTはまだないとあわせて明記しています。

補足図では、65歳以上の用量反応曲線のプラトーが1日35〜40gと、若年層より5g程度高い側にずれることも示されています。ただしこれも探索的な位置づけで、本文中に図はありません(補足資料の図です)。

この層別解析は9試験しかありません。著者は「順位の変化は不安定かもしれない」「仮説生成的なものであって決定的ではない」と繰り返し書いています。ここは数字を鵜呑みにしないほうがよいところです。

トレーニング歴では順位が変わらなかった

トレーニング経験2年以上の群(12試験)と、トレーニング未経験者・レクリエーションレベルの群(18試験)で分けた解析では、順位はほぼ同じでした。

  • 経験者:ホエイ 0.90 / カゼイン 0.72 / 牛乳 0.65
  • 未経験者:ホエイ 0.88 / 牛乳 0.74 / カゼイン 0.70

順位は変わらない一方で、効果の推定値そのものは未経験者の区分で大きいと報告されています。トレーニングを始めたばかりの筋肉は機械的な刺激にも栄養にも反応しやすく、その反応の大きさが種類による差を覆い隠す、というのが著者の説明です。
逆に経験者では絶対的な差が小さくなるぶん、ロイシン量や消化速度の違いが結果に表れやすくなる可能性がある、と著者は述べています。

筋力(1RM)でもホエイが1位だったが、こちらは扱いに注意

36件のうち1RMを報告していた24件を統合した結果では、ホエイのSUCRAが0.84で1位(カゼイン0.71、牛乳0.63)、プラセボとの差は+5.8kg(95%CrI 1.9〜9.7)と報告されています。
方向としては除脂肪量の結果と一致しています。

ただし著者は、この筋力の解析について自ら「探索的な副次アウトカム」と位置づけています。理由は、レッグプレス・ベンチプレス・スクワットという絶対重量のまったく違う種目の1RMを、kgという単位のまま一緒くたに統合しているためです。試験ごとの結果のばらつき(異質性)も除脂肪量より大きく(τ = 4.2kg。τが大きいほど試験によって結果が違うことを表します)、単位の違う指標をそろえて比べる効果の大きさ(SMD)や種目別の解析のほうが適切だったが実施できなかった、と限界に書かれています。

この研究の限界

著者が挙げている限界のうち、読み方に直接かかわるものを挙げます。

1. エビデンスの確実性は種類によって大きく違う
CINeMA(ネットワークメタアナリシスの結果をどこまで信頼できるか評価する枠組み)での評価は以下の通りです。

比較 確実性
ホエイ vs プラセボ 中程度(Moderate)
牛乳・カゼイン・ソイ vs プラセボ 低(Low)
エンドウ・ライス・ブレンド vs プラセボ 非常に低(Very Low)

ライスは2試験、エンドウとブレンドは3試験しかありません。この3つの順位は、あと1〜2本の試験が出るだけで入れ替わり得ると閾値解析(結論をひっくり返すのに必要な追加のエビデンス量を見積もる解析)で示されています。同じ解析で、ホエイを1位から引きずり下ろすには追加で8本以上の「差がなかった」試験が必要と推定されています。

2. 予測区間はすべて0をまたぐ
信用区間が0を外れていたホエイ・牛乳・カゼインでも、予測区間は0を含んでいます(ホエイで−0.18〜2.66kg)。平均としてはプラスの方向でも、個々の試験の結果はばらつくということです。

3. 対象者の偏り
72%の試験が男性のみを対象としており、性差の解析は実施できていません。65歳以上を対象にした試験も9件だけです。

4. ノード間で対象者が揃っていない
ホエイは若年でトレーニング経験のある男性で多く調べられ(平均34.1歳、75%が男性、40%が経験者)、カゼインのノードは高齢者・トレーニング未経験者の割合が高い(平均48.8歳、経験者29%)という偏りがあります。間接比較の前提である「比較される集団の性質が揃っていること」(推移性)が完全には担保されていない、というのが著者の自己評価です。
また、直接比較と間接比較の食い違い(不整合)を調べる検定では有意な食い違いは検出されなかったものの、整合性を仮定したモデルと不整合を許すモデル(UME)のあてはまりの差はΔDIC = −2.8にとどまり、著者が事前に決めた5点の基準に届かないため一貫性の仮定を強く支持するものではない、と原文に明記されています。

5. 盲検化が不完全
プロテインとプラセボは味・食感・泡立ちが違うため、参加者が見分けられてしまいます。実際、バイアスのリスク(研究デザイン上の偏りやすさ)の評価で最も多く指摘されたのがこの問題でした。なお全体の判定は36件中、低リスク15件・懸念あり16件・高リスク5件です。

6. ホエイの中の違いは区別されていない
WPC(濃縮ホエイ)・WPI(分離ホエイ)・加水分解物は精製度も吸収も違いますが、この解析ではすべて「ホエイ」として1つのノードに束ねられています。

実践的にどう読むか

この研究から言えるのは次までです。

  • プロテインの種類にこだわるなら、乳由来(ホエイ・牛乳・カゼイン)でプラセボとの差が示されています。ただし乳由来どうしの差は小さく、ネットワーク上での推定でもホエイと牛乳の差は0.06kgです(この値は直接比較の試験ではなく、ネットワーク全体から算出された推定値で、区間は本文の表に載っていません)
  • ホエイをサプリとして飲む場合、曲線が寝るのは1日30〜35g程度と推定されています。それ以上に増やしても上乗せ分は小さくなっていくと示唆されていますが、あくまで探索的な推定です
  • 植物性を選ぶこと自体が間違いという結果ではありません。エビデンスの量が少なく区間が広いだけで、総タンパク質量を揃えれば差は縮まる可能性があると著者は述べています
  • 65歳以上では、ホエイの優位が縮まりカゼイン・牛乳の順位が上がっています。時間帯での使い分けは著者も仮説として挙げていますが、根拠は9試験の層別解析にとどまり、直接検証した試験はありません

著者は、普段の食事から体重1kgあたり1.2〜1.6gのタンパク質を摂れている人であれば、サプリを1日35g以上に増やしても筋肉の発達が進むとは考えにくく、その分の費用やカロリーは睡眠・トレーニングの計画・食事の質に振り向けたほうがよい、と述べています。ただし、この用量の推定は探索的なもので、普段の食事から摂っているタンパク質量は考慮されていません。
なおこの1.2〜1.6g/kgは、著者が「サプリの上乗せ効果を測るうえで足りている」とみなした水準です。同じ論文でも学会(ISSN・ACSM)の推奨として1.4〜2.0g/kgが引用されており、下に挙げた当サイトの記事で扱っている1.6〜2.2g/kgとも幅が違います。目安の数字は、何を基準に置くかで変わるものとして読んでください。

1日の総摂取量の目安についてはプロテインの効果的な飲み方・摂取量・タイミングを徹底解説。で、種類ごとの性質についてはホエイプロテインって何?ソイ・カゼインとの違いは?で扱っています。あわせてご覧ください。

出典



注釈・出典

  1. Dose–structure–population interactions of protein supplementation combined with resistance training on body composition: a Bayesian network meta-analysis with dose–response modeling