本記事の対象者
プロテインを日常的に飲んでいて、腎臓への影響が気になっている方。「高タンパク食は腎臓に悪い」と聞いて不安になったことのある方。
プロテインの話題で必ず出てくるのが「腎臓に負担がかかるのでは」という懸念です。実際、タンパク質を多く摂ると腎臓のろ過量(eGFR=推算糸球体ろ過量。腎臓が1分間にどれだけ血液をろ過しているかの推定値)は上がることが知られています。問題は、その上昇を「傷んでいる証拠」と読むのか「適応している証拠」と読むのかで、ここが長らく曖昧なままでした。
2026年に発表されたメタアナリシス1は、慢性腎臓病のない成人を対象としたRCT(ランダム化比較試験)だけを22件集めて、この点を検証しています。結論から言うと、eGFRは上昇が示された一方、血清クレアチニンには差が示されず、腎障害を示す一貫した生化学的所見は見当たらなかったと報告されました。
ここは読み違えやすいところなので先に断っておきます。「腎障害を示す所見が見当たらなかった」は「腎臓に悪くないと証明された」ではありません。著者自身、血清クレアチニンに差が示されなかったことをもって、わずかな腎の変化を除外できるわけではないと明記しており、長期的な影響についても不確実だとしています。本記事では、その中身と限界を順に見ていきます。
筆者の紹介
どんな研究か
この研究は、高タンパク食と通常〜低タンパク食を比べたRCTを集めて統合したものです。
研究の条件をまとめると以下の通りです。
- 対象は18歳以上で、慢性腎臓病と診断されていない成人。健常者、過体重・肥満、2型糖尿病の人が含まれる
- 高タンパク食の定義は「総エネルギーの約25〜35%」または「体重1kgあたり2.0g/日以上」
- 統合されたのはRCT 22件。7日未満の急性介入、タンパク質量の差がはっきりしない試験、慢性腎臓病・透析・腎移植の患者を対象とした試験は除外
- 主要アウトカムはeGFR(推算糸球体ろ過量)と血清クレアチニン。副次アウトカムは体脂肪率・総脂肪量・除脂肪量(脂肪を除いた体重)
- 医学文献のデータベース(PubMed・Embase・Cochrane)を2026年5月まで検索。研究計画は事前に PROSPERO(研究計画の公開登録先。CRD420251014114)へ登録
試験期間は7日間の管理食試験から2年間の長期試験までと幅があります。参加者数も14名から419名までさまざまです。
ここで一つ、記事を読み進めるうえで重要な前提を置いておきます。eGFRと血清クレアチニンは、どちらも「クレアチニン」という物質を手がかりにした指標です。クレアチニンは筋肉のエネルギー代謝の副産物で、腎臓から捨てられます。だから血中に溜まっていれば「捨てる力が落ちている」と判断できる、という理屈です。
この理屈には抜け穴があります。タンパク質や肉を多く食べる人は、そもそもクレアチニンの産生量が増えるのです。この点は後述の「この研究の限界」で改めて取り上げます。
この記事の数字の読み方
このあとの表と図に出てくる用語を先にまとめておきます。
- RCT(ランダム化比較試験)は、参加者をくじ引きのように分けて条件を比べる試験です。メタアナリシスは、同じテーマの試験を集めて結果を統計的に統合する手法です。
- SMDは「効果の大きさ」を、単位の違う指標でも比べられるようにそろえた数値です。0が「差なし」で、0.2前後が小さい差、0.5前後が中くらいの差、0.8前後が大きい差の慣習的な目安です。
- 95%信頼区間(95%CI)は推定の不確かさの幅です。この幅が0をまたいでいる場合は「差があるとは言えない」と読みます(本記事で「有意」と書いているのは、この幅が0をまたいでいないという判定のことです)。
- I²は試験ごとの結果のばらつきの大きさです。0%ならどの試験もおおむね同じ方向の結果で、大きいほど試験によって結果が違います。
- 予測区間は「次に同じような試験を1本行ったら、結果がどのあたりに着地しそうか」の範囲です。
結果:eGFRは上昇、血清クレアチニンには差が示されず
主要アウトカムの結果は以下の通りです。
| アウトカム | 試験数・人数 | SMD(95%CI) | I² | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| eGFR | 20試験・1,478名 | 0.39(0.09〜0.69) | 74.85% | 有意に上昇 |
| 血清クレアチニン | 19試験・1,044名 | 0.08(−0.09〜0.25) | 20.8% | 有意差なし |
eGFRは有意に上がりましたが、ばらつきが大きく(I²=74.85%)、予測区間は−0.88〜1.67と0をまたいでいます。つまり、次に同じような試験を1本行えば、下がる結果が出ることもありうるということです。
さらに感度分析では、クロスオーバー試験(同じ参加者が期間をずらして両方の食事を試す設計の試験)を除外すると、eGFRの効果の大きさ(SMD)は小さくなり、試験間のばらつきも大きく下がったと報告されています。上昇の方向自体は変わらないものの、その一部はクロスオーバー試験に由来していることになります。
一方で血清クレアチニンには有意な変化が示されませんでした(推定値そのものはわずかに上方向の0.08)。こちらはばらつきも小さく(I²=20.8%)、予測区間も−0.33〜0.48で0を含んでいます。
なお、この研究で統合(メタ解析)できた腎機能の指標はeGFRと血清クレアチニンの2つだけです。事前に予定されていた尿中カルシウム・尿酸・尿pHは試験間のデータが足りず統合できませんでした。アルブミン尿(尿に漏れ出すタンパク質の量。腎臓の早期の異常をとらえる指標)やシスタチンC(クレアチニンとは別の物質から腎機能を推定する指標で、筋肉量や食事の影響を受けにくいとされます)も、個別の試験にはあるものの統合はされていません。
著者はこの組み合わせを「適応的な腎反応(adaptive renal response)」と表現しています。タンパク質を多く摂ると腎臓に流れ込む血液の量が増え、糸球体(腎臓の中でろ過を担う毛細血管のかたまり)の血の巡り方が変わってろ過量が上がります。これは生理的過剰ろ過(physiological hyperfiltration)と呼ばれる、健康な腎臓の正常な反応だという解釈です。
仮に腎臓のろ過能力が落ちているのであれば、老廃物が溜まって血清クレアチニンは上がる方向に動くはずですが、そうした変化は示されませんでした。ただし血清クレアチニンは早期の腎の変化に鈍い指標であり、著者もこれを根拠に腎障害を否定してはいません。血清クレアチニンに有意な変化が示されなかったことは、わずかな腎の変化がないことの証明にはならない、と明記されています。
この研究で統合された5つのアウトカムをまとめると、次の図のようになります。
体組成:体脂肪率と総脂肪量は減少、除脂肪量は差が示されず
副次アウトカムの結果は以下の通りです。
| アウトカム | 試験数・人数 | SMD(95%CI) | I² |
|---|---|---|---|
| 体脂肪率 | 6試験・290名 | −0.28(−0.51〜−0.05) | 0% |
| 総脂肪量 | 7試験・281名 | −0.26(−0.50〜−0.02) | 0% |
| 除脂肪量 | 5試験・222名 | 0.19(−0.08〜0.45) | 0% |
体脂肪率と総脂肪量は有意に減少しました。除脂肪量は高タンパク食のほうが大きい方向でしたが、95%信頼区間が0をまたいでおり、差が示されたとは言えません。図1では下の3本がこの体組成のアウトカムにあたります。
ただしこれらはいずれも5〜7試験、200〜290名程度と規模が小さい点は押さえておく必要があります。著者も「統計的な精度が限られ、推定の安定性と一般化可能性への確信が下がる」と書いています。
体脂肪率・総脂肪量とも予測区間はわずかに0をまたいでいます(それぞれ−0.59〜0.02、−0.55〜0.04)。
この研究の限界
著者が挙げている限界のうち、結果の読み方に直接かかわるものを取り上げます。
1. クレアチニンに依存した測定である
これが最大の論点です。ほとんどの試験は、血中のクレアチニン濃度から計算する推算式(MDRD、CKD-EPI、Cockcroft–Gault)でeGFRを出しています。高タンパク食ではクレアチニンの産生自体が増えるため、観測されたeGFRの上昇が「本当に腎臓のろ過が増えた」のか「クレアチニンの産生が増えたぶん、推算式の計算結果が動いただけ」なのかを、この方法では切り分けられません。
この問題は逆方向にも働きます。血清クレアチニンに差が示されなかったことも、わずかな腎の変化がないことの証明にはならないと著者は明記しています。
なお22件のうち数件は、イヌリン、イオヘキソール、パラアミノ馬尿酸といったろ過量を直接測る方法や24時間クレアチニンクリアランスを使っていますが、少数派です。
2. 試験期間が短い
2年間の試験もありますが、多くは数週間から数ヶ月です。過剰ろ過が長期間続いた場合に何が起きるかは、この研究では答えられません。著者は「糸球体内圧(糸球体の内側にかかる圧力)の上昇が持続すれば、理論的には進行性の腎ストレスに寄与しうる」と、可能性としては残しています。
3. 高タンパク食の定義がバラバラ
「総エネルギーの25〜35%」と「体重1kgあたり2.0g/日以上」は生理学的に同じ意味ではありません。総摂取カロリーが少ない人の30%と多い人の30%では絶対量がまるで違います。実際、統合された試験の介入内容は「3.0g/kg/日超」から「35%タンパク質・約1.24g/kg/日」まで幅があります。これがeGFRのばらつきの大きさ(I²=74.85%)の一因だと著者は分析しています。
4. 対象者が均質でない
健常者、肥満者、2型糖尿病患者、トレーニング経験者が混在しています。もともと腎血行動態が変化している可能性のある肥満・インスリン抵抗性・2型糖尿病の人については、著者は特に不確実性が残ると繰り返し述べています。
5. 観察研究とは結論が食い違う
長期の観察・疫学研究には、高タンパクの食事パターンが腎臓や心臓・代謝の面で好ましくない経過と結びついていたと報告しているものがあります。ただし著者はこれを「特にもともと腎機能の低下や代謝疾患のある高リスク集団において」と限定したうえで、この食い違いは研究デザインの違い・取り除ききれない交絡(他の要因の影響)・対象者の特性(特にもともとの腎機能や併存疾患)を反映したものだろうと整理しています。そのうえで、RCTに限定し腎臓病のない人に絞ったこの研究のほうが因果関係の評価には直接的だと述べています。ただしこれは著者側の主張であって、観察研究の指摘が消えたわけではありません。
実践的にどう読むか
以上を踏まえると、この研究から言えるのは次の範囲です。
- もともと腎臓病のない人が、7日〜2年程度の範囲で高タンパク食を摂った試験を統合しても、腎障害を示す一貫した所見は出ていません。ただしこれは「腎臓に悪くない」と示されたという意味ではありません
- eGFRの上昇は「悪化」ではなく適応だと著者は解釈しています。ただしクレアチニンに依存した測定なので、上昇そのものの解釈にも慎重さが要ります
- ここでの「高タンパク食」は、体重1kgあたり2.0g/日以上、または総エネルギーの25〜35%という水準です。前者は体重60kgなら1日120g以上、70kgなら140g以上にあたります。後者は総摂取カロリー次第で絶対量が変わるため体重からは換算できません(統合された試験には35%タンパク質で約1.24g/kg/日というものもあります)。この2つは同じ意味ではなく、食事にプロテインを1〜2杯足しているだけでこの水準に届くかどうかも人によります
- すでに腎臓の病気がある人は、この研究の対象外です。含まれているのは腎臓病のない成人だけで、慢性腎臓病・透析・腎移植の人を対象にした試験は明示的に除外されています
- 肥満・インスリン抵抗性・2型糖尿病がある場合は、不確実性が大きいと著者が名指ししています
- 体脂肪率と総脂肪量は減少が示されました。除脂肪量については差が示されていません。いずれも試験数が少なく、推定の精度は高くありません
健康診断でeGFRやクレアチニンの値を見て不安になった、という方は、採血の前にタンパク質の摂取量が普段より多くなっていなかったかを一度振り返ってみるとよいかもしれません。これは本論文が検証した論点ではありませんが、高タンパク摂取や食事由来のクレアチン(肉やサプリに含まれる、クレアチニンのもとになる物質)によってクレアチニンの産生が増えうることは、本論文でも一般論として触れられています。そのうえで気になる数値が続くようなら、自己判断せず医師に相談してください。この記事は特定の方の状態について判断できるものではありません。
なお、タンパク質の摂りすぎ全般についてはプロテインの摂りすぎは体に悪いの?で、1日の摂取量の目安についてはプロテインの効果的な飲み方・摂取量・タイミングを徹底解説。で扱っています。あわせてご覧ください。
出典
- PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42289790/
- DOI: https://doi.org/10.1111/dom.70996
- 全文: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13449083/
注釈・出典
- Effects of High-Protein Diets on Renal Function and Body Composition in Adults Without Chronic Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomised Trials