本記事の対象者

ダイエットのために摂取カロリーを抑えている方。ダイエットのために有酸素運動を頑張っている方。
「有酸素運動と筋トレ、どっちをやれば痩せるのか」は繰り返し議論されてきたテーマです。
結論から言うと、脂肪量を落とす効果は有酸素運動の方が高く、筋トレは落ちる過程で筋肉を守る役割を持ちます。両方やるのが一番強い、というのが現時点でのエビデンスです。
本記事では、その根拠と、よく語られる「飢餓モード」がどこまで本当なのかを整理していきます。

筆者の紹介

筋トレ好きのエンジニアです。技術評論社『Software Design』で「エンジニアのためのやる気UPエクササイズ」を2年間(全26回)連載し、Xのスペースで毎晩21時から20分の家トレを配信する「みんトレ」を6年ほど続けています。

ダイエットの難しさ

「肥満者が正常体重に到達する確率は0.6%程度である」というコホート研究1が2015年にイギリスの臨床実践研究データから発表されました。
研究によると、肥満者が正常体重に到達する確率は、女性で124人に1人、男性の場合210人に1人だったそうです(イギリス人のデータ)。
このように大体はうまく行かないダイエットですが、ダイエットを難しくしている要因の一つにダイエットに関する誤った常識が蔓延していることがあります。
なので、本記事を通して、ダイエットに関する現段階における知識を広めていければと思っています。

飢餓モード(代謝適応)について

「飢餓モード(代謝適応)」という言葉を知っていますか。
摂取カロリーを制限することでエネルギー代謝率(RMR)が悪くなったり、過食になったりすることを言います。

1988年の研究2は、もともと24時間あたりのエネルギー消費量が低い人ほど、その後2年間で体重が増えやすいことを示したものです。予測値より1日200kcal低い人は、200kcal高い人に比べて7.5kg以上増えるリスクが約4倍でした。カロリー制限が代謝を落とすことを示した研究ではない点は注意が必要です。
一方、1999年のメタアナリシス3では、除脂肪量と脂肪量の差を調整したうえで、元肥満者の安静時代謝率が対照群より約3%(論文の記述では3〜5%)低いと報告されています。差はありますが、リバウンドの全てを説明するほど大きな数字ではありません。
1998年の研究4では、食事制限だけのグループより、運動を組み合わせたグループの方が減量後の体重を維持できていたと報告されています。


Meta-analysis of resting metabolic rate in formerly obese subjects3より

有酸素運動と筋トレ、脂肪が落ちるのはどっちか

2025年に発表された系統的レビュー・メタアナリシス5では、有酸素運動と「有酸素+筋トレ」の方が、筋トレ単独よりも脂肪量を大きく減らすと報告されています。体脂肪率の変化には差が出ませんでしたが、絶対的な脂肪量では有酸素運動を含むグループが優位でした。
同時に、筋トレを組み合わせても脂肪の減り方を邪魔しないことも示されています。つまり脂肪を落とす主役は有酸素運動で、筋トレは減量中の筋肉量を守る役割だと整理できます。

かつては「有酸素運動をやりすぎると代謝が落ちる」と言われることがありました。根拠として持ち出されるのがUCP-3というタンパク質で、持久系トレーニングによって筋肉中のUCP-3が減ること自体は事実です6。ただしこれは運動の効率が上がったことによる適応と解釈されており、基礎代謝が過剰に上がらないよう調整する働きと考えられています。「有酸素運動をすると代謝が壊れる」という説明の根拠にはなりません。

一方で、有酸素運動だけで大きく減量しようとすると時間がかかるのも事実です。2002年の研究7では、ウォーキングの量を増やしても体重減少の効果は限定的でした。食事の管理が伴わないと、運動だけで大きな赤字は作りにくいということです。

時間がないときの選択肢

有酸素運動には悪玉(LDL)コレステロールを下げる、心肺機能を向上させるといったメリットがあります。ただ、まとまった時間を取れないという人には、短時間で心肺機能を上げられるSIT(スプリント・インターバル・トレーニング)という選択肢があります。

SIT(スプリント・インターバル・トレーニング)

SITは短時間で済むのが利点のトレーニングです。

  • 短時間で心肺機能を向上できる
  • やった後しばらくは脂肪の燃焼が高まる

やり方は以下を繰り返すだけです。

  1. 30秒全力運動
  2. 2分30秒〜3分休憩
  3. 30秒全力運動

繰り返さなくても30秒全力運動を2回やれば心肺機能の改善には十分な効果8だと言われています。
全力運動のおすすめの種目はバーピージャンプです。
バーピージャンプは全身運動なので、インターバルトレーニングでよく使われます。



同様の運動にHIIT(ハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニング)がありますが、SITの方が体重減少の効果が高いと言われています。また、HIITの方が休憩時間が短いためかなりキツイです。
また、SITは音楽を聞きながらやることで、パワーをより発揮できるだけでなく、楽しさも向上するといった報告もある9ため、是非楽しみながら挑戦してみてください。

注釈・出典

  1. Probability of an Obese Person Attaining Normal Body Weight: Cohort Study Using Electronic Health Records
  2. Reduced Rate of Energy Expenditure as a Risk Factor for Body-Weight Gain
  3. Meta-analysis of resting metabolic rate in formerly obese subjects
  4. Long-term maintenance of weight loss: do people who lose weight through various weight loss methods use different behaviors to maintain their weight?
  5. Comparison of concurrent, resistance, or aerobic training on body fat loss: a systematic review and meta-analysis (2025)
  6. Effect of 2 weeks of endurance training on uncoupling protein 3 content in untrained human subjects
  7. Dose–response effect of walking exercise on weight loss. How much is enough?
  8. Effect of Number of Sprints in an SIT Session on Change in V˙O2max: A Meta-analysis
  9. Music enhances performance and perceived enjoyment of sprint interval exercise.